ライトノベルについて語りたい

語る相手がいなくて寂しいのでブログで語ります。

ライトノベルについて語りたい1表

1999年9月。
ノストラダムスの予言は外れていたようだ。
次に騒いでいるのは2000年問題だ。
だがちょっと待って欲しい。本当にノストラダムスの予言は外れたのだろうか。
予言はこうだった。

「1999年7月に恐怖の大王が来る」というものだ。
1999年7月に来るだけで滅亡は7月にするとは言っていない。
これは1999年7月生まれの人がいつか世界を滅亡させるのではないか?その可能性だってある。
そんなことを考えていたらクスクスと笑い声が聞こえた。
声の聞こえた方を見ると右隣の女子が文庫本を読んでいた。

文庫本の裏表紙は白背景にバーコードというシンプルなものだ。自分の方からは表紙は見えなかった。
え?この人、文庫本読んで笑っている?怖い・・・そういう感想を持ったように覚えている。

この時自分は声をかけてしまった。ここで声をかけなければその後の人生は大きく変わったものだろう。
だが仕方がない。この文庫本を読んで笑っている女子がすごく可愛かったから。声をかけてしまうのはある程度の自然の摂理だ。

「あれ?何読んでるの?」
と声をかけた。9月に席替えしたばっかりで必死のアピールだ。
「あっ!これ…坂田さんから借りたの。アニメでやってたの知ってる?スレイヤーズっていうんだけど」
すごい可愛らしい声で表紙を見せて説明してくれた。
表紙にはスレイヤーズ!とタイトルが書かれ真ん中にどーんとキャラクターのイラストが描かれていた。

スレイヤーズ・・・知ってはいる。小学校の時アニメも何回かは見たことがあるように思える。
少なくとも表紙に描かれているキャラクターがリナという名前だったのは知っていた。
「あれ?スレイヤーズって漫画とかじゃないの?」
「違うよ。小説だよ~」

そうなのか。小説なのか。この時一番気になったのはこの女子が本を読んで笑っていたということだった。
活字を読んで笑えるという感覚は自分には分からなかった。どういう風に書けば活字で笑うことができるのだろうと興味が湧いた。
自分も読んでみたいと純粋に思った。それは本当に面白いものだろうかと疑問に思った。

「坂田さんから次借りれるか聞いてみるよ。OKだったらそのまま回して」
「いいよ~」

そんなやりとり後、坂田さんからOKをもらい次の日自分は初めてライトノベルというものを手に取った。

衝撃だった。中学1年生でそれまで適度にドラマを観て漫画を読んでアニメを観てゲームをして映画を観ていた自分は衝撃を受けた。
今まで自分は物語でここまで笑ったことがあっただろうか。こんなに面白いと思ったことがあっただろうか。実際にはあったはずだ。
だけどそれは面白いのが分かっていたものが面白かったというものだったと思っている。

ドラゴンボールなんて面白いに決まっている。もののけ姫も面白い。ファイナルファンタジーもそうだろう。ジャッキーチェンだって面白いに決まっている。
自分は元より面白いという先入観を持って物語と接していたように思う。

自分はこの時恥ずかしながら初めて、面白いかどうか分からないものを面白いものだと判断したように思える。
ファンタジーゲームのような世界で展開されるコメディという物語にすっかり魅了されてしまった。
神坂一という作家に魅了されてしまった。

活字なのに分かるのだ。物語の登場人物が誰がどんな表情でどんな動きでどんな口調でやりとりしているのかが分かってしまうのだ。
そりゃ書けば分かるだろうと思うかも知れない。だけどスレイヤーズという作品は書かれていないケースが多い。

「○○がこういう表情でこんな口調で話した。」なんて書かなくても分かるのだ。
下手をしたら丸々1ページ鍵括弧の会話だけで進んでいく。
なのに分かるのだ。誰が話しているのか、どんな表情で言っているのかそのときどんなポーズをしていてどんなテンションでやりとりしているかが想像できるのだ。
自分の脳内で展開される世界、活字を読んでいるのに映像を観ているような感覚が新鮮だった。

もちろんこれまで活字を読んでこなかったというわけではない。だが、自分はスレイヤーズという作品で初めてこの感覚を味わった。
スレイヤーズ1巻を読み終えた時、自分はこの「ラノベ」というジャンルと長い付き合いになるだろうなぁと予言めいたことを思ったのだった。